ロシア産ガスの対EU供給が半減、BRICSはエネルギー供給の混乱と市場動揺に対処する局面に入った
ロシアからEU向けのパイプラインガスとLNGの購入が概ね半減し、ロシアから中国へのLNG供給も減少していることで、エネルギー供給の不安定化がBRICS圏内外の市場に波及している。これを受けて各国はエネルギー確保や国内市場安定化のための政策を次々と打ち出し、金融市場や政府支出、規制面での対応が目立った。
同時に各国の対応は方向性が分かれ、ロシアの軍事的な動きとエネルギー供給戦略、中国の地域協力提案、ブラジルやインドの国内支援策や財政運営は必ずしも一致していない。エネルギーと地政学の変動がBRICS内の協調を難しくし、市場のボラティリティを高めている。
ブラジル
ブラジルでは財務閣僚の交代と燃料供給確保、企業支援を柱にした対応が進む。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領はダリオ・ドゥリガンを新財務相に指名し、中央銀行のセリック金利の利下げに対して「少なくとも0.5ポイントは期待していた」と公に批判した。政府は化学業界向けの課税削減法案に署名し、国家石油庁は石油インフラへの攻撃を受けてペトロブラスにディーゼルとガソリンの市場供給を通知する方針を示した。連邦政府は州知事に燃料に係るICMS税の引き下げを要請し、道路貨物輸送に関する臨時規則を発出して運送事業者や契約関係に影響を及ぼす措置を導入した。医薬品価格管理委員会は複数の卸売業者に罰金を科し、社会保障機関は年金受給者への13カ月分給与の前倒し支給を発表した。
ロシア
ロシアではエネルギー輸出の落ち込みと軍事・原子力関連の政策形成が進行している。1月のEU向けパイプラインガスとLNGの購入が概ね半減し、1〜2月の対中国LNG供給も7.4%減少した。ロスアトムは第四世代原子炉と燃料戦略に関する政策を形作る新たなウラン評議会を招集し、ロステックはパンツィールS防空システムの一括納入を部隊に行った。モスクワはウクライナでの「解放」を報告し、黒海のガスパイプラインに対する攻撃を阻止したと主張する一方、地政学リスクや商品価格変動を織り込む中で国内株式は下落に転じた。
インド
インドでは金融政策の新枠組み採用とインフラ投資・安全保障強化を同時に進めている。インド準備銀行は2026–27年度予算を承認し、新たな戦略枠組み『ウトカルシュ3.0』を採択した。格付け会社フィッチは2026年成長見通しを7.5%に上方修正したが、中東情勢の再燃はセンセックスを約2,500ポイント、ニフティを約775ポイント押し下げた。閣議はNH-160A改良に約332億ルピーの支出を承認し、ヴァラナシのマルチモーダル・ロジスティクスパークに関する覚書が締結され、アッサム州の水路プロジェクト着工には約52.6億ルピーが配分された。内務省は約120万枚のSIMカードを無効化し、中央政府は被災州とジャンムー・カシミール向けに約191.3億ルピーの追加災害救援資金を承認した。内務省は対テロ政策『PRAHAAR』を公表し、国防省は『Defence Forces Vision 2047』を示した。
中国
中国では「人への投資」を掲げた内需・雇用支援とアジア太平洋でのエネルギー協力提案を同時に打ち出した。入国観光の支援、大学新卒者の就職支援、地域間のエネルギー協力に重点を置き、エネルギー面では供給源多様化やクリーンエネルギー転換を含む三案を提示した。人民元は1ドル=6.8898元まで強含む一方で本土株は下落して取引を終えた。上海で国内2番目の国産大型クルーズ船が進水し、北京の研究チームはソフトウエアリスク検出ツール『オープンクロウ』を公表した。外務省は長期化する戦争に関して「勝者はいない」と述べ、メキシコによる対中投資見直しの可能性に深刻な懸念を表明した。マカオ特別行政区議会は国家安全維持委員会の設置法案を可決した。
南アフリカ
南アフリカでは司法制度や政治スキャンダル、電力・雇用リスクが浮上している。シリル・ラマポーサ大統領は司法制度の欠陥が成長の制約になると警告し、マドランガ委員会では地方公務員による入札案文書共有をめぐる証言が出て野党が即時対応を要求した。フリーダム・フロント・プラスは最高財務責任者の調査を求める緊急動議を提出し、アクションSAはMMCのモロディを停職処分とした。報道は計画された電力料金の引き上げが企業の利幅を圧迫し雇用を脅かす可能性があると伝え、ウムズィムクルのコミュニティが50年ぶりの土地返還を祝った。公営放送はSABCニュースの責任者交代を実施し、またイスラエルによるイランへの新たな攻撃が中東の地政学的リスクを高めているという指摘があった。
ロシアの対EUガス供給急減とBRICS各国の内向き対応は、エネルギー市場の供給ショックと金融市場のボラティリティを引き起こしうる。BRICS内部では安全保障優先と経済安定化という相反する優先順位が鮮明になり、協調に基づく安定供給の確保よりも域内各国の個別対策が国際的な混乱を拡大させる構図が既に顕在化している。