南ア憲法裁、国家保健法の主要規定無効 NHI導入に暗雲
南アフリカの憲法裁判所は、政府の国民保健保険(NHI)導入計画に打撃を与える形で、国家保健法の第36条から第40条を無効とする判断を下しました。
これらの規定は、医療提供者が新たに開業したりサービスを拡充したりする前に政府から必要性証明書(Certificate of Need)を取得することを義務付ける内容であり、裁判所はその要件を非合理的であると断じて元の高等裁判所の判断を支持した形です。
問題提起を行った市民団体Solidarityは2024年にプレトリア高等裁判所で当該規定の違憲を主張して勝訴しており、今回の憲法裁の判決はその判断を確認するものとなりました。
この判決は、特に農村地域での人員不足とインフラの劣化が公的医療制度に圧力をかけていると警告してきた南アフリカ医師会(SAMA)の懸念が示された局面で下され、同会副会長のZanele Bhikitshaはダーバンでの記者会見で慢性的な資金不足こそがこの分野が直面する最大の課題だと強調しました。
Bhikitshaは、公募停止(モラトリアム)によって要員の補充が停止し地方間の人員移動も制約されているため現場の配置が悪化していると指摘し、これが医療の質を損ない長い待ち行列や膨大な患者数を前に適切なケアが提供できない事態を招いており、最悪の場合には患者の死に至るケースも既に見てきたと述べました。
同氏は具体例として『2,000人あたり医師が1人しかいない』ような極端な比率を挙げ、現場が抱える逼迫ぶりを改めて示しました。
SAMAはさらに、コミュニティサービスを終えた少なくとも1,800人のジュニアドクターが各州の保健省に受け入れられるための予算が確保されておらず失業状態にあると指摘し、人的資源の欠如が制度全体の運用能力を著しく制約していると警鐘を鳴らしています。
会長のMvuyisi Mzukwaは、南アフリカがNHIを完全に実施する準備は依然として整っておらず、その主因として指導力とガバナンスの深刻な課題を挙げるとともに、人員不足やインフラ劣化、農村と都市の間に存在する医療施設の不平等にも政府が対処する必要があると述べました。
一方でSAMAのCEO、Mzulungile Nodikidaは技術と人工知能(AI)が遠隔地での医療アクセス改善に寄与する可能性を指摘し、専門医が国内のどこにいても農村の看護師や医師とつながる仕組みを実現するには診療所への技術投資と安定したインターネット接続、加えて全国で統一された電子カルテシステムの整備が不可欠だと強調しました。
こうした現場からの警告と人的・資金面の課題を背景に、憲法裁の今回の判断はNHI導入を巡る実務上の準備不足や制度設計の在り方を改めて鮮明にした形です。